【取材ノート:名古屋】名古屋グランパス四季折々:Jリーグ30周年の記憶から生まれた新たな火種? 名古屋の開幕戦は指揮官同士も“バチバチ”で挑む。
ひょんなことから今季の明治安田J1開幕戦には、新たな“火種”も生まれたかもしれない。と、大げさには書き始めたが、半分は冗談みたいな話である。17日から始まっていく2023年のJリーグ開幕戦を前に、3年ぶりに開催されたJリーグキックオフカンファレンスの場において、名古屋と横浜FCの開幕カード記者会見が行われた。そこで開幕ならではの質問が飛び交う中、30周年を迎えるJリーグということでこんな質問をしてみたのである。「Jリーグの記憶として、思い浮かぶのは何ですか」と。
司会から先に指名されたのは横浜FCの四方田修平監督である。1993年のJリーグ元年の熱について語り、最近は現場の人間としてJリーグを現実のものとして闘っていると締めたが、その最中に“うっかり”「ジュビロの黄金時代が僕は非常に好きだったんで、その時のチームの強さとか、そういうものを非常に自分の中では鮮明に覚えています」と発言してしまった。「してしまった」というのは、直後に答えた長谷川健太監督が、最高の返答をしたからである。
「私もマイヤーのゴールは鮮明に覚えています。やっぱりJリーグ元年の記憶というのは非常にこう鮮明に思い出すものです。ただ四方田監督がジュビロが好きだという風におっしゃってますけど、私はジュビロが大っ嫌いです!!」
これには恐縮したように四方田監督も苦笑い。もちろん長谷川監督一流のジョーク、いや本気なのだろうが、この場でこの発言をきっぱりとするあたりは千両役者である。会見場はすっかり和み、開幕戦への緊張感はどこへやら。にこやかな雰囲気のうちに開幕カード記者会見は終了した。
こうした対面での取材機会から離れること3シーズン、カンファレンスと同時進行で行われたJ1の指揮官たちによる監督会議も久々に行われ、「監督たちの顔を見るとだいぶ変わったなと。非常に若返った。選手だった、私が監督をやり始めた頃は選手だった人が今はもう監督になって、非常にしっかりとしたそれぞれのサッカー哲学を持ってやられている」と長谷川監督は改めてリーグの進歩や時間の流れを感じたという。昨年末のワールドカップの熱はJリーグの現場にももちろん伝播しており、「その勢いというか、炎というか、熱をさらに“熱く”するために」(長谷川監督)とこれから始まる戦いに向けての鼻息も荒い。
ただでさえ昨季の成績と開幕戦の相手が昇格組ということで、名古屋にかかるプレッシャーは大きな今年の開幕戦だ。そこに生まれた監督同士の“確執(?)”を加えて、ニッパツでの一戦には渦巻く炎が見えて仕方ない。
Reported by 今井雄一朗