「最後のクオリティのところは疲れにも比例してくる。決定力アップのために『頑張らないでいい守備』をもう少し突き詰めていきたい」。AC長野パルセイロのシュタルフ悠紀監督は、2月1日に行われたトレーニングマッチ・FCマルヤス岡崎戦(○3-1)の後にそう話していた。
昨季の長野は8位でフィニッシュ。順位こそトップハーフに位置したものの、得点数だけを見れば11位と、下から数えたほうが早かった。攻撃にテコ入れが必要なのは言うまでもないが、攻撃と守備は表裏一体。4週間にわたる御殿場キャンプで、指揮官は守備の新機軸を打ち出している。
キーワードは『省エネ』。昨季は『Aggressive Duels(積極的なデュエル)』という信条のもと、能動的にボールを奪いにかかり、インテンシティの高さを示した。しかし、その激しさゆえにファウルも少なくなく、セットプレーから失点を許す場面も。夏場に7試合連続で複数得点がなかったのも、守備に労力を割かれたことが要因かもしれない。それを踏まえて今季は「相手を頑張って追い込まなくても、じわじわと追い込んでボールが取れるような仕組み」(シュタルフ監督)にシフトしている最中だ。
2月15日のトレーニングでは、午前・午後ともに5バックのブロックを崩す形に着手。攻撃側がメインの練習ではあったが、守備側もボールを奪えばカウンターやビルドアップに転じる。昨季よりも前線に人数を残し、なおかつ守備で走る量を減らしているため、カウンターの迫力を出しやすくなった。とはいえ「前から行く守備もやる時はやる」とセンターバックの秋山拓也。「無理に取りに行かないで、後ろからしっかり声をかけるのが大事」と言うように、DFラインが中心となってメリハリを付けている。
現状、守備時は5バックの前に1アンカーを置いている。主にアンカーのポジションを務める西村恭史は「(プレスに)行くところと行かないところの区別だったり、難しい部分はたくさんある。意思統一がないと守備もはまらない」と強調。持ち味である刈り取る守備を発揮しつつ、「行かない」ことによって中盤のスペースを埋め、なおかつ攻撃に余力を残すこともできる。その状況判断はアンカーに限らず、どのポジションにも求められるだろう。
一見すると消極的な守備に映るかもしれないが、「Run Fast(速く走る)」や「Aggressive Duels(積極的なデュエル)」といった信条が薄れているわけではない。より効率的に守備をしながら、どれだけ攻撃へエネルギーを費やせるか。攻守両面で「Grow Everyday(日々成長)」を遂げ、開幕戦からその成果を示す構えだ。
Reported by 田中紘夢