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【取材ノート:名古屋】名古屋グランパス四季折々:J最速の3トップ爆誕なるか。“NJM”が2023年のリーグを席巻する

2023年1月19日(木)
すでに沖縄での一次キャンプも1週間を過ぎ、徐々に今季のチーム構築への投げかけも増えてきた中で、長谷川健太監督の新たなチャレンジがついにヴェールを脱いでいる。キャンプ開始当初は従来の基本布陣である3-5-2を使ってトレーニングは進められてきたが、徐々に体も仕上がり戦術練習に取り掛かれるようになってきた段階で、指揮官は3-4-3へのアプローチを開始した。

「今季は永井、ユンカー、マテウスをどうやって共存させるかがポイントになる」。キャンプ序盤、長谷川監督は語っていた。シーズンを通してツートップの中でローテーションするのではなく、強力な個性と爆発力をもった3人を同時起用する。FC東京でも強力な外国籍3トップを操ってきた実績があり、チームの最大出力を引き出す采配に踏みきったことは納得感を通り越して期待感が膨らむ。3人揃ってスピードがあり、周囲を使う器用さと、個で局面を打開する能力にも長ける。得点力向上が唯一にして最大の課題である名古屋にとって、これは浮沈のカギを握る一大プロジェクトだ。



しかも、実際に並べてみると実に相性が良い。彼らは揃ってサッカーIQも高く、互いとチームメイトの動きを見ながらプレーができ、かつ献身性も高い。ユンカーにはそこまで守備のタスクを期待できないが、今季も背番号10を背負うマテウスが驚くほどにチームのためにプレーするようになった。「新加入のユンカーは点取り屋ですから、彼をしっかりサポートして、アシストもしていきたいです。彼は点を取る選手です」。ユンカーだけでなく、プレースタイルの似た永井謙佑や、レオナルドら他のアタッカーに対しても支え、活かしたい気持ちを隠さないマテウスは、より彼らしい奔放さと、中心選手としての責任感を胸に今季はその真価を見せてくれそうでもある。



一番のベテランである永井も視野は広い。練習中は常に大きな声を出し、トレーニングの雰囲気づくりからチームへの要求まで、とにかくすべてにおいてリーダーシップを見せ続けている。新加入のユンカーに対しても守備の要求、ポストプレーの要求、ポジショニングの要求ととにかくリクエストだらけで、そのコミュニケーションが3トップにおける連係の醸成に一役買っていることは間違いない。フォアチェックの苛烈さ、運動量の多さもこの時期としてはまずまずで、自分の背中で見せる部分にも怠りはない。攻撃陣の長としての振る舞いには、長谷川監督の信頼も厚い。



そしてユンカーも爽快にプレーしている。調整については慎重に状態を見ながらというところもあるが、名古屋名物の“オールアウト”にもしっかり走り切っている。常に走ること、出しきること、守備でもやりきることを求められる中では「キャスパー!」発破をかけられることも多いが、ストライカーとしての本分をわきまえて、良い意味で“アリバイ守備”をしながら得点を狙っている。8日目に行われたフルコートの紅白戦では素晴らしい抜け出しからシュートを決め、練習後に「1得点しただろ?」と不敵な笑み。シュート練習などの決定率が高く、さすが点取り屋という姿を見せてくれているだけに、守備と攻撃のタスクバランスを上手く取れて行ければ期待値はさらに上がる。

まだまだ合わせ始めて数回という段階だが、3トップの良い立ち上がりに長谷川監督も笑顔を見せていた。彼らだけでは得点力倍増とはいかないが、ここが決まることで攻撃の流れは間違いなく定まる。J最速3トップが今季のJリーグを席巻すれば、悲願のタイトルも昨季からの巻き返しも、グッと現実味が増していく。

Reported by 今井雄一朗