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【取材ノート:新潟】3年ぶりに帰還する新井直人が描き出すもの

2022年12月28日(水)
選手が移籍し、そでを通すユニフォームの色が変わるとき、新たな所属先のクラブと、これまで所属していたクラブの双方からリリースが出されることになる。送り出す側と、迎え入れる側。真逆の立場だからこそ、リリースに記されているコメントを重ね合わせると、立体的な像が見えてくる。

12月2日、DF新井直人がセレッソ大阪からアルビレックス新潟に完全移籍で加入することが発表された。3年ぶりの帰還である。新潟サイドのリリースで、新井は「ここに戻ってくることは、自分としてまだ早いのではないかといろいろと悩みました。それでも寺川(能人)強化部長をはじめ、熱く必要としてくださったアルビレックス新潟というクラブのために、もう一度自分の人生も懸けて勝負したいと思いました」と心情を吐露している。

2019年1月、新潟経営大学の4年生だった新井は、新潟の高知キャンプに練習参加した。そして、左右両足から精度の高いキックを繰り出し、両サイドバック、さらにセンターバックもハイレベルにこなせる高い戦術理解力を示して、見事にプロ契約を勝ち取った。2年目のシーズンは、新たに就任したアルベル監督(現FC東京監督)が推し進めるボールを保持し、試合を支配する攻撃的なサッカーの中で、さらに存在感を増していった。

2021年、新井は戦いの舞台をJ2の新潟から、J1のC大阪に移す。今年は期限付き移籍した徳島ヴォルティスでプレー。J1昇格に突き進む新潟の前に立ちはだかった。第20節、鳴門・大塚スポーツパーク ポカリスエットスタジアムでの対戦(△1-1)では右サイドバックとして、対面した新潟の攻撃の中心、ドリブラーの本間至恩(現クラブ・ブルージュ)を完全に封じ込め、いっさい仕事をさせなかった。

再びデンカビッグスワンスタジアムのピッチに立った第30節(△2-2)。ダニエル ポヤトス監督が施す入念な新潟対策の中で、前回対戦とは異なる布陣、3-4-1-2の右ウイングバックに入り、タフネスぶりを見せつけた。

ホームでもアウェイでも譲らず、決着が付かなかった古巣との対戦。強みも弱みも知り尽くして戦いを挑んできた新井は、2023シーズン、6年ぶりにJ1を戦う新潟において、誰よりもチームを客観視し、パワーアップさせる存在になり得るだろう。

12月2日、C大阪から発表されたリリースの中で、新井は「セレッソに戻ってもう一度チャレンジしたい気持ちも当然あり、すごく悩みました。試合に中々出られず、やり残したことや悔いも沢山あります。それでもいま必要とされる所でプレーしたいと思い、セレッソを離れることを決断しました」と胸の内を明かしている。

同日の新潟からのリリースと合わせることで、より際立つ悔しさ。それは新井がこの2年間、さらなる高みを目指し、努力し続けたからこその反骨心に他ならない。そして、「このクラブでタイトルが獲りたいです。来シーズン皆さんと再び共に戦えるのを楽しみにしています」という願いをかなえるための、何よりの糧となる。

Reported by 大中祐二