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【取材ノート:藤枝】初舞台に向けて新体制が整いつつある藤枝MYFC。既存戦力と新戦力が融合し、J2でも旋風を巻き起こせるか

2022年12月23日(金)
来季の明治安田生命J2リーグが2月18日(土)に開幕することが発表され、初舞台に昇格する藤枝MYFCは、例年より早い1月8日(日)に始動することが決まった(同日に新体制発表会見も開催)。

松の内が明けてすぐにトレーニングが始まるため、年内からチームも選手も着々と準備を始めており、チーム編成もかなり定まってきた。そこで少し気が早いが、来季の藤枝への期待感について考えてみたい。

まず来季の戦力については、心配されていた主力選手の流出が最小限に抑えられたのは大きい。GK内山圭が鳥栖に移籍し、ボランチの鈴木惇は未定だが、他の主力選手はほぼ来季も藤枝でプレーすることが決まっている(2022年の登録選手でまだ動向が公表されていないのは3人だけ)。

J3ベストイレブンに選ばれた横山暁之や、新加入でブレイクした久保藤次郎や榎本啓吾らも契約を更新し、キャプテンを務めた杉田真彦と川島將も残っている。

超攻撃的GKとして注目を集めた内山の移籍は痛いが、岡西宏祐(32歳/甲府)と上田智輝(26歳/大宮)、新卒の北村海チディ(22歳/桐蔭横浜大)という3人のGKが加入する。

他のポジションでも続々と新戦力が加わっており(12/22現在で12人)、今後も追加があるかもしれない。

そんな中で楽しみなのは、主力の多くが残って藤枝スタイルの継続性が高いというところだ。J3で高く評価された超攻撃的サッカーが、J2でどれだけ通用するのか、新風を吹かせられるのか。須藤大輔監督は「(J2では)前から激しく(プレスに)来るチームは多くないので、自分たちのサッカーは出せると予想しています」と言う。

今季のJ2では、J3から昇格したばかりの熊本がJ1参入プレーオフ決定戦まで進んだことが話題になった。須藤監督は、熊本の大木武監督に強い影響を受けており、ボールを握りながら攻撃的に戦うスタイルという意味では共通点もある。

須藤監督は、藤枝スタイルをJ2でも変えるつもりは毛頭なく、より進化させていく考え方。その進化が順調に進めば、主導権を握って相手を押し込むことはできるだろう。ただ、J2になるとゴール前の守りはJ3よりも強固になるので、そこを崩してゴールを量産できるかどうか。熊本の再現をするには、そこが大きなポイントとなるだろう。

その意味では、既存の選手たちのさらなる成長と、新戦力の活躍が欠かせない。

既存戦力に関しては、ルーキーからベテランまで2022年のタフな戦いで大きな成長を見せ、昇格という結果を勝ち取ったことで自信もつけた。そのうえで、まだまだ伸びしろを残している選手が多い。

新戦力については、現時点ではビッグネームがいるわけではないので未知数な面が多いが、ひとつ言えるのは強化部の“見る目”が確かだということ。今季の後半戦で軸になった選手のうち、新戦力は6人いた。GK内山、CB小笠原佳祐、ボランチ・水野泰輔の3人は熊本からの移籍組で、前年は出番が多くなかったが藤枝のサッカーにフィットして主軸として大活躍。FW渡邉りょうは7月に沼津から移籍し、すぐにセンターフォワードとして大きな貢献を見せた。そして両ウィングバックの久保(右)と榎本(左)は、大卒1年目ながら持ち味を存分に発揮し、得点力も大いに高めた。

彼らを見出した須藤監督や大迫希強化担当は、自分たちのスタイルに合う選手を的確に発掘する慧眼を持ち、彼らのウィークポイントに目を向けるのではなく、ストロングポイントを存分に引き出して結果につなげてきた。

来季の新戦力も、その見る目に適った選手たちなので、これまで実績があまりなかったとしても藤枝でブレイクする可能性は大いにある。

というわけで、楽しみや見どころが多い藤枝ではあるが、強化を支える資金力に関しては潤沢とは言い難い。入場料やグッズ販売、そしてスポンサーの収益をどれだけ増やせるか。新たなスポンサーから支援を受けるためにも、どれだけ多くの地域住民に愛され、応援されているかが重要になる。

ワールドカップでの日本代表の活躍でサッカー熱が大いに高まっている今、ぜひ皆さんで声をかけ合って、J2仕様に改修された藤枝総合運動公園サッカー場に足を運んでほしい。サッカーに対して目の肥えた地元民たちにとっても、サッカー観戦初心者にとっても、須藤MYFCが観て楽しいサッカーを、サッカーの街の誇りとなりうるスタイルを展開しているのは間違いないのだから。

Reported by 前島芳雄