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【取材ノート:名古屋】名古屋グランパス四季折々:名古屋グランパス、“絶賛売り出し中”の1週間

2022年11月16日(水)
さながら“歳末大売り出し”である。11月5日に今季の公式戦最終試合を終え、ローマとの親善試合までの間に長めのオフを取っていた名古屋グランパスだが、練習こそしていなかったものの活動自体は実は精力的でもあった。特にリーグ最終節から1週間後の12日からは怒涛の勢いで選手がホームタウンのあちこちに赴き、名古屋グランパスを強烈にアピール。コロナ禍の影響で3年間行えずにいたサポーターや愛知県の人々との対面でのコンタクトを主眼に置いた、様々なイベントを仕掛けた。



12日には高卒新人の豊田晃大と吉田温紀がひとり親家庭に向けたスポーツイベントに参加し、子どもたちとともにフットサルを楽しんだ。こうしたイベントに参加すること自体初めての二人には少しの戸惑いも感じられ、最初は遠巻きに見ながら声をかけつつ、「とりあえずここいっとけばいいかなって」と、互いの1対1で盛り上げる方法に“逃げる”しかなかった。だが生来のコミュニケーション上手である豊田がしっかり膝をついて目線を合わせて話すことで徐々に打ち解けていき、吉田温もそれにならって会話を重ねていくと雰囲気も一変。それでもまだまだ盛り上げ上手とまではいかなかったが、和気あいあいとした雰囲気のフットサルにできたことで選手たちにも笑顔が浮かんだ。



同じ日には名古屋の中心部・栄のさらにど真ん中にある中部電力MIRAI TOWER (旧名古屋テレビ塔)の1階にある「HUB GRAMPUS PUB MIRAI TOWER店」にて永井謙佑がトークショーを行ない、旧知のサポーターたちも多く集まる中、クラブOBの増川隆洋さんとともに楽しいトークを展開。「降格させてしまっていたことはずっと気にかかっていたので」と、3度目の名古屋復帰に懸ける思いを吐露しつつ、増川さんと共闘した2011年頃の思い出話などにも花を咲かせた。彼が福岡大から加入したのがもう10年前の出来事だというのは時間の流れの速さを感じるところがあるが、それだけ年齢を重ねたサッカー選手がまた古巣に戻ってチームを救うというのは、なかなかに良いストーリーが生まれたと改めて思う。



週明けからはトップチーム選手たちが子どもたちに夢を与えんとサービス精神全開で動いている。14日からは全体練習も再開しているが、その合間や練習後などの時間を使って、ホームタウンの小学校やクラブのサッカースクールへと選手が訪問。とりわけサッカースクールの方はサプライズ訪問とあって子どもたちの驚きぶりも半端なく、それだけでも彼らプロ選手の価値はあるというもの。シーズン中や通常のシーズンオフになると外国籍選手などの参加もなかなか機会が限られてくる中、今季は親善試合までの期間のちょっとした“緩さ”も手伝って、レオ シルバ、ランゲラック、チアゴ、レオナルド、マテウスの全選手が参加する豪華版になったのも大きい。





その中で外国籍選手たちが口々に語るのは、「こんな経験は自分たちでは考えられない」ということだった。ブラジルやオーストラリアで彼らが過ごしてきた環境ではクラブのトップチームのプロ選手が一緒にボールを蹴ってくれるようなことはなかったらしく、ブラジル人選手たちは「自分に置き換えて考えてみて、自分たちは絶対に楽しい存在」(マテウス)、「自分がそういう立場にいられる自体が貴重な経験」(レオナルド)とひたすら全力で楽しんでいた。ランゲラックも同様に楽しむことを優先するかたわら、キーパースクールの子どもたちに熱血指導も。「自分が14歳や15歳でやっていたことを小学生でもうやっている。レベルが高い」としつつ、「正しい知識は早ければ早い方がいい」とセービングの基礎にして一番重要な「前でセービングをすること」を繰り返し説き、なんとも贅沢な時間を未来のプロサッカー選手たちに提供していた。





さらに15日には3年ぶりとなる小学校訪問が行なわれ、豊田市立東広瀬小学校に仙頭啓矢と藤井陽也が登場。創立150周年の伝統校ながら全校生徒130名の小さな学校で、子どもたちとミニゲームを楽しんだり質問に答えたりする選手たちの表情は常に活き活きとしていて爽快だった。子どもたちの真面目で、特に無邪気な質問に一生懸命答える選手の姿を見るのも久々で、目を輝かせる小学生たちの表情もまたこうしたイベントの価値を示すに十分なものがあったと思った次第。





その日の夜にはレオとチアゴが小学校1~2年生のスクール生たちを相手にミニゲームを楽しみ、「彼らには“勝ちたい”という気持ちを感じた。それはサッカーだけでなく、生きていく上でも重要なこと」(レオ)と、選手の目にもポジティブなものが映った様子。子どもの頃にプロサッカー選手たちをボールを蹴ったことがある、それが地元のプロサッカーチームの選手、というのは、日本のサッカー人口とホームタウンのさらなる発掘にも間違いなく一役買ってくれることだろう。



このほかにも同時進行で様々なイベント、催しへのチームの参加はあり、ようやく選手という最大の“武器”を広報戦略に組み込めるようになってきたのは、クラブにとっても大きいはず。もちろん選手ファースト、試合や練習が最優先にはなってくるが、使えるものは何でも使って地域の中での自分たちの価値を上げることも一方で重要である。何より参加者がみんな笑顔のイベントは見ていて気持ちが良く、その相乗効果がチームや選手をまた強くすることも絶対にある。残る2022年も、来季についても、このようなイベントが数多く企画されていくことに期待したい

Reported by 今井雄一朗