まさに電光石火。明治安田生命J2リーグ今季最終戦となるV・ファーレン長崎戦、試合開始から開始わずか3分余りで大宮アルディージャが先手を取る。
右スローインから岡庭愁人がボールを受け、中央へ正確なクロスを送り込む。そこへ果敢に飛び込んでいったのは、2トップの富山貴光でも中野誠也でもない。ボランチの栗本広輝は空いたスペースに走り込み、しっかりと頭で合わせた。
「自分たちが前から行って取りにいくというところはこの試合へ準備してきたことですし、それを表現しようというところで、うまくいった部分が多くなったんじゃないかなと思います」
これが、2022年シーズン最終節にして、栗本にとっての今シーズン初ゴール、そしてJリーグ初ゴールとなった。順天堂大学卒業後、JFLのHondaFCを経てアメリカでもプレーをしてきた栗本は、今年大宮が新体制で始動した後にチームに加わった。沖縄キャンプを含め練習生として帯同し、そこでのプレーを前任の霜田正浩監督に認められ正式契約となった。
Jリーグデビューはセンターバック。その第6節ファジアーノ岡山戦では、アクシデントから30分近くGKを務め注目を集めたが、以降は出場機会に恵まれなかった。
いぶし銀の輝きを放ち始めるのは、相馬直樹監督体制となってから。第23節ツエーゲン金沢戦で16試合ぶりの出場を果たすと、続く第24節いわてグルージャ盛岡戦以降は、出場停止の1試合を除く全試合に先発出場を果たし、ボランチの軸として貢献した。
その危機察知能力とボール奪取能力は秀逸。そこかしこに顔を出して相手チャンスの芽を潰し、巧みに相手からボールを奪うと、そのまま攻撃の起点となった。
「もちろんチームとして必要なポジションなら僕はチャレンジしますし、チームに貢献できれば何でもいいと思ってるんですけど、自分の感覚としては、やはりボランチのほうがやりやすいと思います」
おそらくGKも、またやれと言われればやるだろう。何よりチーム、という人である。自身の初ゴールにも「うれしいですけど、勝ち切るためのゴールではなかった」と振り返りつつ、同点に追いつかれた場面を「自分のミス」と省みて、自身で「絶対に勝たなければいけない場所」と位置付けるホームで勝利できなかったことを強く悔いた。
その中で、自身のJリーグ1年目を総括する。
「GKをやることなんてもちろん想像してなかったですし、予想外のことがいくつも起きた1年だったと思います。でも、(シーズン)途中からは試合に出られるようになって、副キャプテンという役割も与えていただいて、本当に実りのあった、いろいろ経験することができたシーズンでした」
その「実り」を、また次の機会で活かしてもらえるなら、それほどうれしいことはない。来年も、ぜひまた共に闘いたい人である。
Reported by 土地将靖