9月のホーム3連戦を2勝1分の無敗で乗り切ったヴィッセル神戸は、J2自動降格圏内の17位から一気に13位まで浮上した。躍進の理由としてはチームの結束力が高まったことが考えられる。長年のクラブスローガンでもある「一致団結」を軸に、正念場のホーム3連戦を振り返ってみたい。
事の始まりは、明治安田J1第28節の京都戦に敗れた時点にさかのぼる。ACL準々決勝の全北戦に敗れた神戸は、中11日の準備期間を経てこの京都戦に臨んだ。選手たちの疲労は回復し、充分に対策を練った上での戦いだった。
だが、試合開始から9分間で2失点を許し、ゲームは暗礁に乗り上げる。そして、59分に小林友希が退場処分となり、勝利へのゲームプランは狂ってしまった。結果、0-2の完敗だった。
この京都戦の後、アンドレス イニエスタが音頭を取り、全選手・チームスタッフを集めてミーティングが開かれた。GK飯倉大樹によると、この時に「チームとしてどうあるべきか」を再確認したという。
直後の天皇杯準々決勝では鹿島アントラーズに敗れたものの、リーグ戦では次節の名古屋グランパス戦に引き分け、続くFC東京戦に勝利。そして、J1残留争いの直接対決となったガンバ大阪戦で貴重な勝点3を手にした。
G大阪戦では、戦列に復帰したエース大迫勇也が2ゴールを挙げたことで、チームの勢いが加速した印象もある。その2得点に絡んだのが武藤嘉紀だった。
特に、自ら獲得したPKチャンスを大迫に譲った1点目には武藤の強いメッセージが詰まっていた。試合後、武藤は大迫にPKを任せた理由についてこう話している。
「個人としての結果もほしいですが、チームにとってはサコが決めた方がプラスだと考えました」
昨季途中に神戸にやってきた武藤は「もう一度、ゴールマシンになるために加入した」と話していた。そこには、今秋のFIFAワールドカップへの強い想いもあった。もちろん、今もその目標を忘れたわけではないが、それ以上に今はチームを最優先している証拠だ。
武藤はPKを譲った後、今度は大迫の逆転ゴールをアシストしている。ゴール前でこぼれ球を拾ったあの場面、エゴを出せば自分でシュートを打てたかもしれない。だが、武藤はパスを選択した。このシーンからも神戸の「一致団結」の浸透具合は垣間見られた。
Reported by 白井邦彦
事の始まりは、明治安田J1第28節の京都戦に敗れた時点にさかのぼる。ACL準々決勝の全北戦に敗れた神戸は、中11日の準備期間を経てこの京都戦に臨んだ。選手たちの疲労は回復し、充分に対策を練った上での戦いだった。
だが、試合開始から9分間で2失点を許し、ゲームは暗礁に乗り上げる。そして、59分に小林友希が退場処分となり、勝利へのゲームプランは狂ってしまった。結果、0-2の完敗だった。
この京都戦の後、アンドレス イニエスタが音頭を取り、全選手・チームスタッフを集めてミーティングが開かれた。GK飯倉大樹によると、この時に「チームとしてどうあるべきか」を再確認したという。
直後の天皇杯準々決勝では鹿島アントラーズに敗れたものの、リーグ戦では次節の名古屋グランパス戦に引き分け、続くFC東京戦に勝利。そして、J1残留争いの直接対決となったガンバ大阪戦で貴重な勝点3を手にした。
G大阪戦では、戦列に復帰したエース大迫勇也が2ゴールを挙げたことで、チームの勢いが加速した印象もある。その2得点に絡んだのが武藤嘉紀だった。
特に、自ら獲得したPKチャンスを大迫に譲った1点目には武藤の強いメッセージが詰まっていた。試合後、武藤は大迫にPKを任せた理由についてこう話している。
「個人としての結果もほしいですが、チームにとってはサコが決めた方がプラスだと考えました」
昨季途中に神戸にやってきた武藤は「もう一度、ゴールマシンになるために加入した」と話していた。そこには、今秋のFIFAワールドカップへの強い想いもあった。もちろん、今もその目標を忘れたわけではないが、それ以上に今はチームを最優先している証拠だ。
武藤はPKを譲った後、今度は大迫の逆転ゴールをアシストしている。ゴール前でこぼれ球を拾ったあの場面、エゴを出せば自分でシュートを打てたかもしれない。だが、武藤はパスを選択した。このシーンからも神戸の「一致団結」の浸透具合は垣間見られた。
Reported by 白井邦彦