9月7日に行われた名古屋グランパスのトレーニングは、実に2年半ぶりとなる一般公開の練習となった。コロナ禍によって練習見学自体が難しくなり、ファンクラブ限定などで人数の制限と把握をしながら徐々に再開しだした最中での“一般公開”は、名古屋が日常を取り戻すための新たな一歩としても重要だった。
その日のトレーニングでは、2つの朗報がチームに届いている。ひとつは8月27日のG大阪戦で負傷退場し、その後全治不明の左膝内側側副靭帯損傷の診断を受け治療に入っていたマテウスが、室内でのリハビリの後にピッチで軽くジョグをしたことだ。緩いペースで2~3周程度のものだったが、この種の負傷は全治に1ヵ月前後かかっても普通のところ、受傷から10日ほどで走れるまでに復帰したのだから希望も湧く。長谷川健太監督は全治を不明としたことについて、「個人差があるので。それでも数試合はいないということ」と話していたが、事と次第、そしてチームの状況によってはシーズン内の復帰も視野に入ってくる。慎重になりたい箇所の負傷ではあるが、経過としては良好とも言え、やはり期待はしてしまうところだ。
もう一つは酒井宣福の復帰である。6月15日のトレーニングで負傷し、箇所は奇しくもマテウスと同じ左膝の内側側副靭帯。酒井の場合は全治が約6~8週間とされていた中で、3ヵ月ほどをかけてようやく全体練習復帰にこぎつけられた。「3~4週間はずっと固定のギプスをつけていた」といい、マテウスのケースとは対照的にその状態は重かった様子で、練習の中で見せる動きもまだまだ膝を気にしている動きが多かった。持ち前のフィジカルコンタクトの強さは上半身に限っては健在だが、クイックネスの部分と単純なプレーの中での運動量が不足している印象で、「まだまだ20%前後くらい」と本人もここがリスタートのラインだと自覚する。フルメニュー消化と言えど、7日はゲーム形式では本数を限って出場しており、一度などシュートブロックに入って左足を強打、痛みにうずくまるシーンがあって周囲をヒヤヒヤさせた。「終わったことはどうしようもないので、ここから先で自分が何ができるのか示し続けるだけ」と覚悟を決める男の公式戦復帰はなるか。
彼らの2名のFWの復帰が望まれるのは、名古屋の攻撃に新たな変化が起きつつあるため。28節の福岡戦の3得点目はスピード感あふれる崩しの中から、永井謙佑がこの上なくストライカーのポジション取りから奪ったものだった。「ボックスの中にFWがいないと絶対に得点は入らないので、そういう嫌らしい位置に自分が立てるようになりたい」。攻守において献身的なハードワークを見せる選手だが、FWをやるために古巣に復帰した生粋の点取り屋である。この場面で永井が考えていたのは、味方の崩しを見て「DFラインを駆け引きをすること」。その結果がきっちりオンサイドでエリア内でのボールレシーブを成功させての冷静なゴールだ。この崩しにおいてもフィニッシュにおいても、マテウスと酒井は十分に力を発揮できる選手である。酒井は「明確な武器を持っている選手なので、それを活かすために自分がどうプレーすべきなのかというのは整理できている」と永井とのコンビネーションにも自信を見せた。チームには柿谷曜一朗やレオナルドなど他にもFWがいるが、酒井との化学反応ももちろん見てみたい。
9月から10月にかけては難しい対戦相手の続く名古屋だが、チームは充実感を膨らませ続けてもいる。そこにさらなる追い風を吹かせるかもしれない二人の状況は、チーム内競争への刺激としても大きなものになるはずだ。何よりチームのために全力を尽くすその努力が、できるだけ良い形で報われてくれればと思う。
Reported by 今井雄一朗
その日のトレーニングでは、2つの朗報がチームに届いている。ひとつは8月27日のG大阪戦で負傷退場し、その後全治不明の左膝内側側副靭帯損傷の診断を受け治療に入っていたマテウスが、室内でのリハビリの後にピッチで軽くジョグをしたことだ。緩いペースで2~3周程度のものだったが、この種の負傷は全治に1ヵ月前後かかっても普通のところ、受傷から10日ほどで走れるまでに復帰したのだから希望も湧く。長谷川健太監督は全治を不明としたことについて、「個人差があるので。それでも数試合はいないということ」と話していたが、事と次第、そしてチームの状況によってはシーズン内の復帰も視野に入ってくる。慎重になりたい箇所の負傷ではあるが、経過としては良好とも言え、やはり期待はしてしまうところだ。
もう一つは酒井宣福の復帰である。6月15日のトレーニングで負傷し、箇所は奇しくもマテウスと同じ左膝の内側側副靭帯。酒井の場合は全治が約6~8週間とされていた中で、3ヵ月ほどをかけてようやく全体練習復帰にこぎつけられた。「3~4週間はずっと固定のギプスをつけていた」といい、マテウスのケースとは対照的にその状態は重かった様子で、練習の中で見せる動きもまだまだ膝を気にしている動きが多かった。持ち前のフィジカルコンタクトの強さは上半身に限っては健在だが、クイックネスの部分と単純なプレーの中での運動量が不足している印象で、「まだまだ20%前後くらい」と本人もここがリスタートのラインだと自覚する。フルメニュー消化と言えど、7日はゲーム形式では本数を限って出場しており、一度などシュートブロックに入って左足を強打、痛みにうずくまるシーンがあって周囲をヒヤヒヤさせた。「終わったことはどうしようもないので、ここから先で自分が何ができるのか示し続けるだけ」と覚悟を決める男の公式戦復帰はなるか。
彼らの2名のFWの復帰が望まれるのは、名古屋の攻撃に新たな変化が起きつつあるため。28節の福岡戦の3得点目はスピード感あふれる崩しの中から、永井謙佑がこの上なくストライカーのポジション取りから奪ったものだった。「ボックスの中にFWがいないと絶対に得点は入らないので、そういう嫌らしい位置に自分が立てるようになりたい」。攻守において献身的なハードワークを見せる選手だが、FWをやるために古巣に復帰した生粋の点取り屋である。この場面で永井が考えていたのは、味方の崩しを見て「DFラインを駆け引きをすること」。その結果がきっちりオンサイドでエリア内でのボールレシーブを成功させての冷静なゴールだ。この崩しにおいてもフィニッシュにおいても、マテウスと酒井は十分に力を発揮できる選手である。酒井は「明確な武器を持っている選手なので、それを活かすために自分がどうプレーすべきなのかというのは整理できている」と永井とのコンビネーションにも自信を見せた。チームには柿谷曜一朗やレオナルドなど他にもFWがいるが、酒井との化学反応ももちろん見てみたい。
9月から10月にかけては難しい対戦相手の続く名古屋だが、チームは充実感を膨らませ続けてもいる。そこにさらなる追い風を吹かせるかもしれない二人の状況は、チーム内競争への刺激としても大きなものになるはずだ。何よりチームのために全力を尽くすその努力が、できるだけ良い形で報われてくれればと思う。
Reported by 今井雄一朗