前節はFC東京に2-0で快勝し、暫定ながら降格圏を脱した清水(15位)。内容的にも、上位の相手に互角以上の戦いを見せ、今後に向けて明るい兆しを感じさせてくれた。その明るい材料とは、エースのチアゴ サンタナが調子を上げてきたことや、乾貴士、ヤゴ ピカチュウ、北川航也といった新戦力がさっそく力を発揮していることが大きいが、その他に両サイドバック(以下:SBと表記)の充実ぶりも見逃せない。
FC東京戦の2得点は、どちらも右SB・原輝綺(1点目)、左SB・山原怜音(2点目)のクロスから生まれたもの。3試合ぶりの無失点も、FC東京の強力なウィング陣を彼らが抑えたことが大きかった。
山原については4月の取材ノートでピックアップしたので、今回は右の原輝綺のことを猛プッシュしたい。
昨年鳥栖から移籍してきた原は、左右のサイドバック、センターバック、ボランチと多くのポジションをこなせる選手だが、清水では加入早々から右SBを主戦場として負傷時以外はフル稼働してきた。
まず身体能力が非常に高く、180cm/72kgでスピード、持久力、跳躍力、インテンシティなどを高いレベルで兼ね備えている。そのうえでパスやクロスの精度と冷静なボールさばきも備え、戦術眼も非常に高い。だからこそ多くのポジションでハイレベルなプレーができるわけだが、彼自身は「オレが、オレが」というタイプではないので、その実力に見合う注目度が得られていないと筆者は感じている。
「(自分の前にいるサイドハーフが)ワイドに張るプレーが得意なら、自分は中のスペースを生かしていくし、中に入るタイプなら外で合わせられる。そのへんは自分の特徴というか、味方がやりやすいようにコントロールしながら、自分も生かしてもらうという形が、FC東京戦ではうまくハマったかなと思います。アダイウトンが攻め残るタイプだったので、いつも以上に頭を使いましたし、試合の中で出てきた条件と照らし合わせながら、守備の仕方や攻撃の選択肢を変えていくというプレーをしていかないと、自分は生き残れない人間だとわかっているので」(原)
客観的に自分や相手、周囲の状況を分析する目を持ち、自分が目立たなくてもチームがうまく回れば良いという価値観の下に最適な戦略を考えていく。彼のクレバーさは、アシスト前の突破のシーンにも表われていた。
「まずヤゴ(ピカチュウ)がワンタッチで出してくれたのが大きかったですし、ついてきたのが松木(玖生)くんだったので、彼の特徴を考えたときにライン際で深くタックルに入って来るだろうと頭をよぎりました。その力を利用しようというのは考えましたけど、あんなにうまくいくとは思ってなかったです」(原)
瞬時の判断で対面した相手の特徴の逆手をとり、鮮やかな突破につなげた原。この場面に限らず、彼に試合中の1シーンを振り返ってもらうと「そこまで考えていたのか」と驚かされることが多い。
そのうえで清水に来てから進化を遂げている部分も多い。クロスの質や精度もそのひとつで、今季に入ってからは得点に直結する縦パスも目立っている。
「そこは鳥栖のときもやってたんですけど、エスパルスに来て合わないことが多くなって、相手に取られてカウンターにつながる回数が増えたので、一度少し控えてたんですよ。でも最近はタイミングが合うようになってきて、自分としてもプレーの選択肢が広がって良かったと思っています」(原)
とくに鈴木唯人との“市船ホットライン”(市立船橋高の先輩・後輩)は本当に息が合っていて、今季の前半戦では鈴木唯の得点や決定機につなげるキラーパスが目立っていた。「あのパスは唯人しか感じられないんじゃないかというぐらい感じてくれるんで、早く帰ってきてほしいですよ」と原自身も言う。鈴木唯はすでに練習に復帰しており、彼が実戦復帰すれば、原のアシストもさらに増えてくるだろう。
攻撃面の進化は今後もさらに続いていくだろうが、もちろんSBの本分を見失うことはない。
「サイドバックはあくまで守備の人間であって、まずはそこから入らなきゃいけないし、自分でもそこはこだわっていきたいです。今の時代はサイドバックが起点になると言われてますし、プレッシャーもあるけど、やってて楽しいですね。強いチームにはかならず良いサイドバックがいるし、そういう選手、チームを目指していきたいと思います」(原)
FC東京戦では対面するアダイウトンにスピードでも引けをとらず、大きな仕事はほぼさせなかった。組織や連携で守れる頭脳を持ち、1対1のデュエルにも強く、逆サイドからのクロスを跳ね返す高さもある。
もちろん森保一日本代表監督のノートにはリストアップされているだろうが、7月のE-1選手権の時期は故障中でA代表初選出は実現しなかった。だからこそ筆者としては、日本中のサッカーファンに「もっともっと原輝綺に注目してほしい!」と声高に言い続けていきたい。
Reported by 前島芳雄
FC東京戦の2得点は、どちらも右SB・原輝綺(1点目)、左SB・山原怜音(2点目)のクロスから生まれたもの。3試合ぶりの無失点も、FC東京の強力なウィング陣を彼らが抑えたことが大きかった。
山原については4月の取材ノートでピックアップしたので、今回は右の原輝綺のことを猛プッシュしたい。
昨年鳥栖から移籍してきた原は、左右のサイドバック、センターバック、ボランチと多くのポジションをこなせる選手だが、清水では加入早々から右SBを主戦場として負傷時以外はフル稼働してきた。
まず身体能力が非常に高く、180cm/72kgでスピード、持久力、跳躍力、インテンシティなどを高いレベルで兼ね備えている。そのうえでパスやクロスの精度と冷静なボールさばきも備え、戦術眼も非常に高い。だからこそ多くのポジションでハイレベルなプレーができるわけだが、彼自身は「オレが、オレが」というタイプではないので、その実力に見合う注目度が得られていないと筆者は感じている。
「(自分の前にいるサイドハーフが)ワイドに張るプレーが得意なら、自分は中のスペースを生かしていくし、中に入るタイプなら外で合わせられる。そのへんは自分の特徴というか、味方がやりやすいようにコントロールしながら、自分も生かしてもらうという形が、FC東京戦ではうまくハマったかなと思います。アダイウトンが攻め残るタイプだったので、いつも以上に頭を使いましたし、試合の中で出てきた条件と照らし合わせながら、守備の仕方や攻撃の選択肢を変えていくというプレーをしていかないと、自分は生き残れない人間だとわかっているので」(原)
客観的に自分や相手、周囲の状況を分析する目を持ち、自分が目立たなくてもチームがうまく回れば良いという価値観の下に最適な戦略を考えていく。彼のクレバーさは、アシスト前の突破のシーンにも表われていた。
「まずヤゴ(ピカチュウ)がワンタッチで出してくれたのが大きかったですし、ついてきたのが松木(玖生)くんだったので、彼の特徴を考えたときにライン際で深くタックルに入って来るだろうと頭をよぎりました。その力を利用しようというのは考えましたけど、あんなにうまくいくとは思ってなかったです」(原)
瞬時の判断で対面した相手の特徴の逆手をとり、鮮やかな突破につなげた原。この場面に限らず、彼に試合中の1シーンを振り返ってもらうと「そこまで考えていたのか」と驚かされることが多い。
そのうえで清水に来てから進化を遂げている部分も多い。クロスの質や精度もそのひとつで、今季に入ってからは得点に直結する縦パスも目立っている。
「そこは鳥栖のときもやってたんですけど、エスパルスに来て合わないことが多くなって、相手に取られてカウンターにつながる回数が増えたので、一度少し控えてたんですよ。でも最近はタイミングが合うようになってきて、自分としてもプレーの選択肢が広がって良かったと思っています」(原)
とくに鈴木唯人との“市船ホットライン”(市立船橋高の先輩・後輩)は本当に息が合っていて、今季の前半戦では鈴木唯の得点や決定機につなげるキラーパスが目立っていた。「あのパスは唯人しか感じられないんじゃないかというぐらい感じてくれるんで、早く帰ってきてほしいですよ」と原自身も言う。鈴木唯はすでに練習に復帰しており、彼が実戦復帰すれば、原のアシストもさらに増えてくるだろう。
攻撃面の進化は今後もさらに続いていくだろうが、もちろんSBの本分を見失うことはない。
「サイドバックはあくまで守備の人間であって、まずはそこから入らなきゃいけないし、自分でもそこはこだわっていきたいです。今の時代はサイドバックが起点になると言われてますし、プレッシャーもあるけど、やってて楽しいですね。強いチームにはかならず良いサイドバックがいるし、そういう選手、チームを目指していきたいと思います」(原)
FC東京戦では対面するアダイウトンにスピードでも引けをとらず、大きな仕事はほぼさせなかった。組織や連携で守れる頭脳を持ち、1対1のデュエルにも強く、逆サイドからのクロスを跳ね返す高さもある。
もちろん森保一日本代表監督のノートにはリストアップされているだろうが、7月のE-1選手権の時期は故障中でA代表初選出は実現しなかった。だからこそ筆者としては、日本中のサッカーファンに「もっともっと原輝綺に注目してほしい!」と声高に言い続けていきたい。
Reported by 前島芳雄