「私はいつも『ヒーローになろう』と選手たちに伝えている」。シュタルフ悠紀リヒャルト監督率いるAC長野パルセイロは、目下3連勝中。その要因として、今まで出場機会が少なかった選手の活躍が挙げられる。
第17節・鳥取戦は、山本大貴の決勝弾で1-0と辛勝。山本は開幕前に左大腿直筋を負傷して出遅れ、第6節・YS横浜戦でようやく初出場を果たす。その後は思うようにパフォーマンスが上がらず、メンバーから外れる時期も続いたが、ここに来て復調。初先発となった鳥取戦で初ゴールを決めた。
第18節・宮崎戦では、山本が2試合連続ゴール。終盤に藤森亮志が決勝弾を挙げ、3-2と競り勝った。藤森も出場機会に恵まれなかったが、鳥取戦で途中出場してウノゼロに貢献。宮崎戦でも2-2の状況から出番が訪れ、チームを救う活躍を見せた。さらに言えば、アシストしたのは7試合ぶり先発の杉井颯だった。
そして前節・讃岐戦は、再びその2人がチームを救う。スコアレスで迎えた90+3分、杉井のクロスから藤森が頭で合わせ、辛くも1-0と勝ち切った。
なぜ“ニューヒーロー”が相次いで生まれているのか。讃岐戦後、シュタルフ悠紀リヒャルト監督は「輝けるタイミングで使うというのは、指導者として意識している部分。藤森に関しては、そのタイミングがそろそろ来たかと思っての起用で、見事に応えてくれた。それは2試合前の山本に関しても同じ」と明かした。
過去にも同様の例はあった。第5節・いわき戦で、大卒ルーキーの山中麗央がいきなり初出場初先発。しかし思うように試合に入れず、前半のみで途中交代となった。その後はメンバー外が続いたが、第10節・岐阜戦でいわき戦以来の出場を果たすと、プロ初得点を記録。さらに言えば、アシストしたのは初出場の小西陽向だった。
先述した選手たちはもちろん、長野の29名は誰一人として練習から腐ることはない。その証拠として「試合前にやる紅白戦のサブ組が生き生きとしている」と藤森(写真)。練習試合を見ても、格下の相手が多いとはいえ勝利数とゴール数が多い。それが試合勘とモチベーションを保つ要因となり、先発組にも刺激を与えている。
「今日(讃岐戦で)選ばれなかった選手たちの中にも、ここに来て活躍できる選手はたくさんいる。今回の藤森のように、また新たにヒーローが生まれて、会見で『〇〇選手が活躍しましたね』という質問に答える日が来ると信じている」。シーズン当初から掲げてきた「ONETEAM」というコンセプトは、着々と強固なものになっている。残り15試合、まだまだニューヒーローは生まれるのだろうか。
Reported by 田中紘夢