6月22日、鹿島アントラーズに敗れたことで大宮アルディージャの今年の天皇杯は終戦となった。もっとも、J2の座を何としても死守しなければならない現状は、タイトルへ本腰を入れて臨めるような状況ではなかったかもしれない。
だが、貫真郷にとっては違った。彼にとって天皇杯という大会は、大きな大きなプロでのファーストステップとなった。
天皇杯2回戦のFC琉球戦は、プロ入り後初めての公式戦。右サイドバックで先発出場すると、チームの攻撃を下支え。風下に回った後半は押し込まれる場面も増えたが、デビュー戦をフル出場し白星で飾った。
特別な試合で、まず意識したのは「最後まで90分間走り切る」。フル出場自体は「良かった」と自賛したが、「最後はギリギリだったので、もっと最後まで周りの選手よりも走り切れるように、練習から強度を上げて頑張っていきたい」と振り返った。相馬直樹監督は「当然こちらとしては(足を)つることも想定しながら準備をしていた」と明かしたが、貫の頑張りを「非常にポジティブなものも多かった。もちろんミスもあったが、前へのベクトルを示してくれた」と、ルーキーの奮闘を評価した。
プロ2試合目は天皇杯3回戦の鹿島戦。初戦に比べ、相手のスケール、強度は一気に上がった。貫自身は、サイドに流れてくることの多い鈴木優磨とマッチアップ。欧州でのプレー経験を持つ選手とのマンツーマンは、間違いなくこれまでで最高レベルであったに違いない。「体の使い方は今までの(対峙した)選手とは違った」と試合開始当初は面食らったが、それでも後半最初の鈴木とのハイボールの競り合いでは気合を見せて競り勝った。「そういった部分で見せないとダメかなと思っていた。学ぶものもあったし、次に対戦する時は勝てるように成長したい」と大きな糧になったようだ。
この試合ではロングスローも見せ、序盤のコーナーキックではキッカーも務めた。精度を欠いた部分もあり回数は少なかったが、「もっとそういう部分を武器にしていければ使ってもらえるチャンスも増えると思うので、もっと武器を増やしていきたい」と意気込んだ。
チームとして決して潤沢とは言えないサイドバックの人材にあって、それでもリーグ戦では開幕直後にベンチ入りしたのみで試合に絡めていない。高さや走力を含め素質は間違いないが、トップチーム昇格前から指摘されるメンタル面、力強さなど課題が少なくないのは本人も承知のはず。この天皇杯で「プロ」を肌で経験できたことが、素養を花開かせるための刺激になるのではないか。そう思わせる2試合となった。
大型サイドバックの本格デビューへ、期待は尽きない。
Reported by 土地将靖