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【取材ノート:清水】サポーターが歓喜した北川航也の復帰。3年間の海外挑戦でつかんだ成長と覚悟とは

2022年6月24日(金)


4年連続のシーズン途中での監督交代があり、リーグ前半を終えたところで16位の清水エスパルス。そんな中、苦境にあえぐチームの一助となるために頼もしい男が帰ってきた。2019年7月からオーストリアのSKラピード ウィーンで海外挑戦を続けてきたストライカー、北川航也だ。
その加入記者会見が、6月23日(木)にIAIスタジアム日本平で行なわれた。



「やっぱりこのクラブは私にとって特別なクラブであり、小さい頃から夢を与えてくれたクラブです。たくさんの地域の方々やサポーターの方々から応援をいただいて、たくさんのリスペクトをもらってきたので、もう一度オレンジのユニフォームを着て日本平のピッチに立ちたいという思いが強かったです」

清水に復帰した理由をこう語った北川。オーストリアでは、1年目で大ケガを負うなどして苦しい時間を過ごし、3シーズンで49試合/5得点と思うような結果を残すことができなかった。だが、それでも得たものは大きかったと言う。

「プレーの強度、インテンシティのところは一番に求められました。いくら練習でゴールを決めても、監督が求めるところまでインテンシティを高めていくことができなければ、試合には出られない。そこは日本にいたときよりも意識しているし、現代サッカーであれば必ず必要なところでもあるので、3年間そういう中でプレーできたことは、自分にとって間違いなくプラスになってると思います。(清水の中でも)そこはトレーニングの中から変えていけると思っています」



ユニフォーム姿を見ても、以前からたくましかった腰回りはさらに大きくなり、上半身の厚みも確実に増している。ゼ リカルド新監督も球際や切り換えといったインテンシティの面は強く求めており、北川の意識とも一致している。
またゼ リカルド体制の清水では、可変型のフォーメーションを採用しており、守備時は4-4-2、攻撃時は4-3-3になる。北川の場合、前の5つのポジション―すなわち3トップと2シャドー(インサイドハーフ)の全てをこなすことができるのも強みだ。

「ヨーロッパでもウイングやシャドー、FWのところもやっていました。今は1トップですけど、シャドーの選手がどんどん追い越していくような近い距離感でサッカーができていると思います。あくまでも監督が決めることですが、このサッカーなら(自分は)どのポジションでもできるというイメージはあります」

もちろんポジション争いは厳しいだろうが、彼のスピード、パワー、技術、そして決定力は、どのポジションでも大きな武器となる。登録期間の関係で出場できるのは第22節・浦和戦(7/16)からになるが、それまでにはコンディションも周囲との連携もかなり向上しているだろう。



この会見を通して印象深かったのは、3年間の海外生活で多くの喜びや苦労を経験し、結婚して子どもも生まれた北川が、グッと“大人”になって帰ってきたということだ。それは会見中の表情や言葉使いにも表われていた。
たとえば、自分の1人称を「僕」ではなく「私」に変えていたこともそのひとつ。「僕にとって……私にとって」と何度も言い直していたあたりには、まだ慣れていない微笑ましさを感じたが、同時に愛するクラブを背負う強い自覚や覚悟も感じさせてくれた。
今の清水は、なかなか結果が出ない中でもチームの空気は変わりつつある。北川自身も「私が(以前)いたときよりも(選手たちの)プロ意識が高いと思います」と語っている。
その意味でも牽引役になってくれることは間違いないだろうが、やはり本人も「早く日本平のピッチで得点する姿を見せたい」と言うように、ゴールという形で貢献してくれることが何よりも期待される。

Reported by 前島芳雄