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【取材ノート:清水】ホーム初勝利をもたらした急造左サイドバック、滝裕太のポテンシャル

2022年5月19日(木)
今季のJリーグYBCルヴァンカップでは、5月18日(水)のBグループ最終節で首位の広島に勝利したが、名古屋が徳島に勝ったことによって予選敗退が決まった清水。ただ、この試合はチームにとって今季の公式戦ホーム初勝利であり、内容的にも収穫の多いゲームだった。

そのひとつは、平岡宏章監督が「出場機会の少ない選手たちが、前からアグレッシブにボールを奪いにいくことができました。そこからビルドアップをしていくという理想的な試合展開が前半は続いたと思います」と試合後に振り返ったように、スタメンを総入れ替えした中で良い内容を表現できたことだ。

チーム最古参のボランチ、竹内涼も次のように振り返る。

「ボールの動かし方とか、どこに立ってそこからどう動いたらここが空くということは、みんなで共有しながら何回も何回もやってきたので、そこをみんなが見逃さずにやれていた分、相手の足が止まったという感じだったと思います。このメンバーで何回も試合をやってるわけじゃないですが、お互いの特徴やみんなが使いたいスペースを見ながら、考えながらお互いにやれたと思います」

プレスをはがされるシーンやミスも当然あったが、そこは全員でカバーし合いながら前半は終始優位に試合を進め、セットプレーから岸本武流の移籍後初ゴールで先制。後半は、広島に盛り返されて62分に同点に追いつかれたが、そこから再びアグレッシブさを取り戻して流れを奪い返し、83分に西澤健太の絶妙なスルーパスから滝裕太が今季初ゴールとなる勝ち越し点をゲット。その後は冷静に試合を運び、2-1でホーム初勝利をつかんだ。


この試合でもうひとつの大きな収穫だったのは、出番に飢えていた選手たちがそれぞれ輝きを放ったことだ。得点に絡んだ岸本、神谷、西澤、滝らだけでなく、先発した全員が持ち味を発揮し、自分の役割を果たした。中でもひときわ明るい材料になったのは、やはり決勝点を決めた滝裕太だろう。

滝は、本来は右利きの攻撃的MFだが、今回は左サイドバックとして先発出場。その狙いについて平岡監督は次のように語る。

「彼は技術が非常に高くてボールが持てる選手なので、そこで一つ起点になれるし、そこからオーバーラップしてクロスもあります。右も左も、中盤も、あわよくばボランチもできる選手。(広島戦でも)一つ起点になって、はがして崩してというところの起点になってもらいたいというのはあります」

前半に関しては、本人も「少し様子を見ながらやっていました」と言うようにボールを受ける位置が低めで、控えめなプレーが目立った。だが、「(初めは)不安そうなところもありましたが、やりながらサイドバックに慣れてきて、最後は気持ちよさそうにやっていた」(平岡監督)という言葉通り、同点に追いつかれてからは積極性を増して、高い位置にボールを絡むシーンがどんどん増えていった。

そして得点シーンでは、点が取れる攻撃的MFという自身の特徴を存分に発揮。慣れないポジションでも少しずつ自分を生かす方法を探り出し、見事に結果を出してみせた。指揮官も滝の評価に「彼にはまだまだいろいろなポテンシャルがあるなと感じています」とつけ加えている。

「(今季は)ここまでサッカー人生で初めてというくらい苦しんだ時期でした。それを経験できたのは良かったですが、ゴールを決めて吹っ切れた感じがします。今日はみんなでミスしてもいいから思い切ってやろう、どんどん前に行こうと話していましたし、それをリーグ戦でもやれたら、もっと上にいけると思うので、そういう雰囲気を作っていきたいです」(滝)

滝に限らず、この広島戦で吹っ切れた選手は多いだろう。中2日でリーグ戦でもホーム2連戦が始まる。良い戦いをしながらなかなか勝ち切れていない清水にとって、ルヴァン組が見せた積極果敢な姿勢は大きなヒントになったはずだ。もちろん戦力としても、平岡監督に良い意味の悩みを与えていることだろう。

Reported by 前島芳雄