「あのPKストップがすべてを変えました」
2点ビハインドからの大逆転勝利を呼び込んだ南雄太のビッグプレーを、霜田正浩監督は手放しでそう称えた。間違いなく試合の行方を左右する、分水嶺となったPKセーブであった。
試合開始直後にPKで先制点を献上、27分にはパスをつながれて2失点目を喫した。そのまた直後である31分、群馬にこの日2度目のPKが与えられた。前半での3失点はあまりにも重すぎる。1本目は止められなかった南だったが、だからこそ意気込んだ。
「3点取られると、もう試合はほぼ終わりに近いので。そういう意味でも何とかしたいという思いは強かったです」
群馬のキッカーは、1本目でも蹴った岩上祐三。キックへの駆け引きはどうだったのか。
「いや、もう逆に駆け引きはなくて。岩上くんがあまり自分を見ている感じがなくて、彼はキックが上手ですから、おそらくコースを決めて、読まれても決まるところに自信を持って蹴ってくるだろうと思いました」
その推測から、自分のプレーは決まった。
「自分ももう割り切って、逆にいつもより早く動こうと。自分はPKはけっこう待つんですけど、2本目に関しては先に動いてとりあえずコースを取れるようにと」
読みはズバリ的中した。岩上のキックは1本目と同じ、キッカーから見て左寄り。コースがやや甘くなったところをしっかりと弾いた。そこに詰めてきた天笠泰輝のシュートも枠を外れ、大ピンチをしのいだ。
「2本あったから止められた部分はあったかなと思います。1本目も待たずにもう少し早く動けば、というのもありましたけど、それもなかなか難しいので」
このビッグセーブがスタンドの熱を呼び、その熱に押されるように大宮の選手たちのプレーに拍車がかかった。その後の大逆転劇は周知のとおりである。
「勝つチームはそうやって試合の流れを変えるプレーができる選手がいる。そういうプレーが少しでもできるように、これを1試合だけじゃなくて何試合もできるようにしたいと思います」
この後が大切であることは、誰もがわかっている。
「連勝しないと順位は上がっていかない。連戦は逆に言うとチャンス。こうやって試合がポンポン来るし、勢いに乗れると勝てたりもする。だからこそ次の試合が大事だと思います」
千葉戦での今季初勝利後、山形戦は不甲斐なく敗れた。同じ轍はもう踏まない――その決意は固い。
Reported by 土地将靖